スマホバッテリーの仕組みとは?リチウムイオン電池の特長を解説!
スマホへ電力を供給しているのが、リチウムイオン電池。
このバッテリーこそが、スマホの中心部。軽量かつ高容量という特長が、スマホの持ち運びやすさと長時間利用を実現しています。
充電と放電を繰り返す、リチウムイオン電池の仕組みは複雑ですが、スマホが成り立つうえで不可欠な技術です。
適切な充電、放電の管理がバッテリー寿命を左右します。今回は、スマホのバッテリーであるリチウムイオン電池をわかりやすく解説します。
リチウムイオン電池とは?
リチウムイオン電池は、その軽量さと高いエネルギー密度が最大の特徴で、これにより長時間のデバイス使用が可能となります。
たとえば、iPhone 15では20時間の動画再生が可能です。これらの電池は「二次電池」に分類され、使用後に再充電して繰り返し使える点で、一度使い切ったら廃棄する「一次電池」とは異なります。
充電時、リチウムイオンは電源からの電力を使って負極から正極へ移動し、電池内部でエネルギーを蓄積します。使用時(放電時)には、これらのイオンが逆方向に移動し、その過程で電子が流れ出てデバイスに電力を供給します。
電池の電解液は、イオンが移動する際の”道”となり、この質と構成が電池の充電速度、寿命、そして安全性に直接影響します。
質が低い電解液の使用は、移動効率の低下、寿命の短縮、場合によっては発熱や発火のリスクにつながります。
リチウムイオン電池と他の電池の比較
チウムイオン電池と似た電池として、「ニッケル・カドミウム(NiCd)電池」と「ニッケル・水素(NiMH)電池」があります。
これらの電池は、リチウムイオン電池よりも以前から使用されている二次電池で、特定の用途では依然として利用されています。
リチウムイオン電池と他の種類の電池(ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・メタルハイドライド電池)の比較を以下の表にまとめました。
特性 | リチウムイオン電池 | ニッケル・カドミウム(NiCd)電池 | ニッケル・水素(NiMH)電池 |
1-エネルギー密度 | 高い | 低い | 中 |
2-メモリー効果 | なし | あり | 低い(新型では改善) |
3-自己放電率 | 低い | 中〜高い | 高い |
4-環境への影響 | 比較的低い(ただし、リサイクルが重要) | 高い(カドミウムは有害) | 比較的低い |
5-耐寒性 | 良好 | 中 | 低下しやすい |
6-使用可能温度範囲 | 広い | 中〜広い(リチウムイオン電池よりは狭い) | 狭い |
- エネルギー密度: たくさんの電気を保存できる機能。
- メモリー効果: 充電を繰り返すと、電池が一定のところで容量を「記憶」し、使用可能な容量が減少してしまう現象。リチウムイオン電池はこのメモリー効果がなく、性能が低下しにくい。
- 自己放電率: 使わなくても、電池の残量が保たれる状態。
- 環境への影響: リチウムイオン電池は比較的環境に優しいが、リサイクルが大切。カドミウムを含む電池は環境にやさしくないといわれている。
- 耐寒性: リチウムイオン電池は寒い場所でも性能が落ちにくい。冬の外出時もスマホの電池が切れにくい。
- 使用可能温度範囲: リチウムイオン電池は暑い場所でも寒い場所でも通常通り動作します。これが、暑い地域でも寒い地域でもスマホが使える理由です。
スマホ、夏場の車の中に置きっぱなしにしたらダメなの?
ダメだよ。リチウムイオン電池は高温や過充電に弱いから、そういう状況は避けた方がいい。電池の寿命を守るためにもね。
リチウムイオン電池の種類
リチウムイオン電池の中にさらに8種類に分けられます。
用途や性能を、簡単に解説します。
種類 | 特徴 | 用途 |
コバルト系 | 初期のリチウムイオン電池で、高価。現在はあまり使われない。 | かつてはモバイル機器に多用。 |
ニッケル系 | 最大の容量を誇るが、安全性に課題。 | 実用化が難しいため限定的。 |
NCA系 | 安全性が改善され、耐熱性が高い。 | 医療機器や電気自動車など。 |
マンガン系 | 安価で安全性が高い。 | 主に電気自動車の車載用。 |
リン酸鉄系 | 安全性が高く、製造コストが比較的安価。 | 電動工具や電気自動車など。 |
三元系 | 安全性を高めた車載向けで、低温時の性能が優れる。 | 医療機器や電気自動車など。 |
チタン酸系 | 安全性が高いが、エネルギー密度は低め。 | モバイル医療機器や大規模蓄電システム。 |
リチウムポリマー系 | 形状自由、軽量だが、扱いに注意が必要。 | 携帯電話、スマホ、タブレットなど。 |
これらのリチウムイオン電池は、それぞれに独特の特性を持ち、様々なデバイスの性能や使用条件に合わせて選ばれています。
リチウムイオン電池の形状
リチウムイオン電池は、その形状によっても様々な特性を持ち、使用される場面が異なります。形状に応じた特徴をわかりやすく解説します。
円筒形
一般的な乾電池の形状。
- 特徴:コストが低く、同じ体積で最も大きな容量を実現できますが、多数のセルを組み合わせる際に隙間が生じ、全体としてのエネルギー密度が低くなることがあります。
- 利用シーン:安価であるため、一定の体積内で最大限の容量を求める家電製品、電動工具に適しています。
角形
四角形で、携帯電話に使われています。
- 特徴:外装に軽量なアルミニウムを使用。充放電による膨張を考慮して設計されています。
- 利用シーン:精密な設計が求められる携帯電話やノートパソコン、デジタルカメラ、ゲーム機などに適しています。
ラミネート型・パウチ型
スマホ、あるいはドローンなどに使われます。
- 特徴:角形の金属缶の代わりに、柔軟性のあるラミネートフィルムを使用します。これにより、軽量化を実現しつつ、充放電による体積の増加に対応できます。
- 用途:軽量で柔軟性が求められるドローン、電動バイク、そしてスマホなどに適しています。
スマホのバッテリー容量の本当の意味とは?
「mAh」はスマホのバッテリーの能力を示す指標で、正式には「ミリアンペアアワー」です。
これは、バッテリーが持つ電力を表し、具体的にはバッテリーがフル充電の状態から空になるまでに供給できる電流の量を意味します。
つまり、バッテリーがどれだけの電気を溜め込んで放出できるかを数値で表しているのです。
電気に関する基礎知識として、「アンペア(A)」は電流の強さを示す単位です。しかし、スマホのバッテリーなどの小さな電子機器では、この単位を1000で割った「ミリアンペア(mA)」が使用されることが一般的です。
「時間・アワー(h)」は、その電流がどのくらいの時間流れ続けるかを示します。
2000mAhとはどういう意味なのか?
2000mAhは、バッテリーの容量を表す単位で、2000mAの電流を1時間流すことができるバッテリーの大きさを意味します。電流の大きさと使用時間によって、バッテリーの持続時間が変わります。
2000mA × 1時間 = 2000mAh
1000mA × 2時間 = 2000mAh
4000mA × 0.5時間 = 2000mAh
上の式から分かるように、電流を半分の1000mAにすれば、バッテリーは2時間持続しますが、4000mAの電流を使えば、バッテリーは30分で使い切ってしまいます。
つまり、mAhの数値が大きいほど、バッテリーの容量が大きく、長持ちするということです。
最近のスマホでは3000mAh~4500mAhが一般的
なお、最近のスマホでは以下の容量です。
- iPhone 15 :3349mAh
- iPhone 15 Pro Max:4422mAh
- Google Pixel 8 :4575mAh
バッテリーや充電器を選ぶ際には、この「mAh」の数値を参考にすることで、自分の使用状況に合った製品を選択できます。
充電技術の最前線!バッテリー充電の進化
最新のバッテリー技術が、私たちの充電体験を一変させてきました。今回は、「急速充電」と「ワイヤレス充電」という2つの技術に注目します。
急速充電で時間を大幅に節約
急速充電とは、その名の通り、短時間で充電する技術のことです。
通常の充電では一定の電流でゆっくりと充電するのに対し、急速充電ではより多くの電流を一気に流し込むことで、充電時間を大幅に短縮します。
例えば、2時間かかっていた充電が、わずか30分から1時間で完了するようになります。忙しい人にとって、これは大きなメリットです。
急速充電のには規格が複数あり、その中でも代表的なものが、「USB Power Delivery (USB PD)」と「Quick Charge(クイックチャージ)」です。
iPhone8以降のモデルはUSB Power Delivery (USB PD)に対応しています。また、Quick Charge(クイックチャージ)はおもにAndroidスマホのQuick Chargeに対応している端末のみ対応。
USB Power Delivery (USB PD)
Quick Charge(クイックチャージ)
ただし、急速充電を利用するには対応した充電器とスマホが必要なので、注意してください。
ワイヤレス充電の魅力!スマホを置くだけで手間いらず
Qiワイヤレス
ワイヤレス充電は文字通り、ケーブルを使わずにスマホを充電する技術「Qiワイヤレス充電」。その名前「Qi(チー)」は中国語の「気」に由来し、「見えない力」という意味。
「電磁誘導の法則」を利用して充電、充電器とスマホを物理的に接続する必要がありません。
つまり、充電スタンドやマットの上にスマホを置くだけで、自動的に充電が始まるのです。
ケーブルを差し込む手間が省けるので、とても便利ですよ。
ただし、現状ではワイヤレス充電の方が充電速度は遅めなので、そこは注意が必要です。
なぜなら、ケーブルでの充電は、電力を無駄なく電力を送れますが、ワイヤレス充電は電力への変換プロセスが複雑でその分、電力がロスされるためです。
リチウムイオン電池って、これからも主流なの?
今も新しい技術も開発されていて、より安全で、より高性能な電池の研究が進められているよ。将来はもっとすごい電池が出てくるかもね。
リチウムイオンバッテリーの充電の仕組み
リチウムイオンバッテリーの充電では、外部からの電力を使ってバッテリー内のリチウムイオンが負極から正極へと移動します。
このイオンの移動によってエネルギーが蓄えられます。充電電圧と時間は、このイオンの移動速度と蓄えられるエネルギー量を制御します。
適切な電圧と時間で充電することが、バッテリーの健康を保つ上で重要です。
充電の仕組みはなかなか難しい。
イメージして。バッテリーの中に、多くのリチウムイオンという小さな粒がある。これが電力を運ぶ役割を持っているんだよ。
リチウムイオンさんが電力をリュックの中に入れて運ぶ感じか。
バッテリーを充電するとき、外からの電気を使って、これらのリチウムイオンを、バッテリーの片側(負極)からもう片側(正極)へと移動させるんだ。
たくさんの人が電車に乗って、駅から駅へ移動するようなイメージだね。
リチウムイオンが正極に到着すると、そこで電力を預けます。これが充電されている状態だよ。
バッテリーが劣化する原因を突き止めよう
劣化する原因は以下の通りです。
サイクル劣化
充電と放電を繰り返す(サイクル)ことで、バッテリー内部の物質が微細な損傷を受け、徐々に性能が低下します。
対策としては、バッテリーを完全には使い切らず、20%程度で充電を開始する。また、100%まで充電をせず、80%程度で充電をやめることをおすすめします。
詳しい解説は「スマホの残り何パーセントから充電すべき?ベストタイミングを解説」をご覧ください。
高温環境による劣化
高温環境下での使用や保管は、バッテリー内部の化学反応を促進し、劣化を早めます。
対策としては、スマホを直射日光の当たる場所や高温になる場所に置かない。特に真夏に高温になった自動車の中に置かないことが大切。
保存劣化
保存劣化は、長期間使用しないで放置することで、自然放電や化学的変化が進み、性能が低下します。
対策としては、長期保存する場合は、20~80%の充電状態で保管し、定期的に充電状態をチェックします。
バッテリーが劣化する危険性って?
劣化すると、バッテリー容量が減少します。バッテリーが元の容量よりも早く減るようになり、充電の持ちが悪くなります。
また、バッテリーが膨張することも。内部の化学反応が原因でバッテリー内部にガスが発生し、物理的に膨らむことがあります。これは機器に損傷を与える可能性があります。
さらに、発火、発煙がおきることもあります。これは、最も危険な状態。バッテリー内部での過剰な化学反応がおき、コントロールできなくなると、熱暴走して、内部構造やショート回路が破壊され、発火します。
PSEマークの秘密とは?
・コンセントに差し込む充電器に記載
・モバイルバッテリーなどに記載
日本では、電気用品安全法(PSE法)に基づき、特定の電気製品は安全基準に適合していることを示すためにPSEマーク(Product Safety Electrical appliance & materials)が必要です。
携帯電話、スマホはこのPSEマークが必要となる電気製品です。
リチウムイオンバッテリーを含む製品において、PSEマークは安全性の証明。PSEマークは製品が日本の安全基準に適合していることを示します。
消費者の安心として、PSEマークが付いている製品を選ぶことで、安全性が認められた製品を使用していることになります。
スマホのバッテリーが持ちが悪くなったときの2つの対処法
最近、スマホのバッテリーの持ちが悪くなったと感じていたら、バッテリーの寿命が近づいている可能性があります。スマホを長年使用していると、バッテリーは徐々に劣化し、溜められる電力の量が減少します。
その結果、フル充電しても以前ほど長く持たなくなります。
このような状況の場合、2つの選択肢があります。
1 バッテリーの交換
スマホのモデルにもよりますが、バッテリー自体を新しいものに交換することで、バッテリーの持ちの悪さが解消します。
バッテリー交換は、特に高価なモデルを使っている場合や、まだスマホ自体に満足している場合に良い選択肢です。ただし、自分で交換することはおすすめできません。
なぜなら、もしも間違えてしまうと、データの消滅やスマホが正常に動作ができなくなる可能性があるからです。
iPhoneなら、Applestore、正規サービスプロバイダなど、専門店に依頼することが安全です。
2 スマホの買い替え
別の選択肢として、新しいスマホに買い替えることも考えられます。
これは、特に現在のスマホが古くなってきている、または最新の機能や性能を求めている場合に適しています。
新しいスマホは、最新の技術や改善されたバッテリー寿命を提供するため、使用体験が大幅に向上する可能性があります。
どちらの選択肢を選ぶかは、スマホの現状、個人のニーズ、予算などによって異なります。バッテリーの持ちが悪くなった場合は、これらの選択肢を検討して、最適な解決策を選択しましょう。
なお、下記の記事では格安スマホのランキングを紹介しています。合わせてご覧ください。
スマホのバッテリーに関する疑問にズバリ回答
ここからはスマホバッテリーに関するよくある質問を紹介します。
Q1: スマホのバッテリーがなぜ劣化するの?
A1: スマホのバッテリーは、使っているうちに少しずつ劣化していきます。
主な原因は、繰り返し充電と放電をすることで内部の物質が微細な損傷を受ける「サイクル劣化」、長期間使わないで放置することによる「保存劣化」、そして高温環境での使用や保管による「熱による劣化」です。
Q2: スマホのバッテリー寿命を長持ちさせるにはどうしたらいい?
A2: バッテリーの寿命を延ばすためには、いくつかの簡単な対策があります。
バッテリーを20%~80%の範囲で充電すること、高温多湿の場所を避けて保管すること、そして落下や衝撃から守ることが重要です。また、正規の充電器を使用し、過充電や過放電を避けましょう。
Q3: スマホを安全に使うためには、何に注意すればいい?
A3: スマホを安全に使用するためには、以下の点に注意してください。まず、PSEマークが付いている正規品のバッテリーや充電器を使うことが大切です。
これにより、安全基準に適合した製品を使用していることが保証されます。
また、スマホを高温にさらさない、物理的なダメージから保護する、そして異常を感じたらすぐに使用を中止し、専門家に相談することも重要です。これらの対策により、バッテリー事故のリスクを低減できます。
まとめ
リチウムイオン電池は、軽量ながら高いエネルギー密度を持つため、スマホなどの電子機器の長時間使用を可能にしています。繰り返し充電できる特性や、放電も少ないといった特長から、スマホの性能を長期的に維持できます。
ただし、リチウムイオン電池にも注意点があります。夏場の車の中などの高温環境、0%にする過放電は電池の劣化を招くため、適切な管理が必要です。
リチウムイオン電池の特性を理解し、効果的に使っていきましょう。